個人事業主は交流会に参加したら、「交際費」で経費計上してもいいの?

事業を成功させていく秘訣として人脈づくりは非常に大切です。そのため、異業種交流会をはじめとする様々な交流会に顔を出している方も多いでしょう。

しかし悩んでしまうのが、交流会で支払った会費を経費としてもいいのかどうかという点です。経理上処理として難しいとされる交際費との絡みを含めながらご紹介します。

交流会の参加費の勘定科目は?

まずは交流会の参加費の帳簿に記載する際に使用する、勘定科目について見ていきましょう。考えられる勘定科目を比較しながらご説明します。

交流会の参加費を交際費にできる?

まず1つ目は「交際費」として処理する方法です。「交際費」という勘定科目は非常に表現があいまいで使用しづらいことから、あまり使用していないという方も多いかもしれません。

そこで、交際費とはどのようなものが当てはまるのかという部分から探っていきましょう。

交際費は、接待交際費とか交際接待費という呼ばれ方をします。租税特別措置法上では、交際費などと表現され、いずれも同じものを指します。

具体的にどのようなものが交際費等に当てはまるのかを簡単に説明すると、2つのキーワードがポイントとなります。

・仕事上もしくは仕事上で取引及び事業に関係ある人
・上記の人への接待、贈答、慰安などのための出費

この観点から考えると、仕事上の業務に関係する出費として考えることができます。つまり、「交際費」勘定で処理することは十分可能です。

ただしお歳暮やお中元、お香典などハッキリと交際費と言えるものとは性質がなるため、いくつかの縛りがあります。詳しくは後述します。

交流会の参加費は諸会費?

交流会の参加費が交際費にはならないとしたら、その他にはどのような勘定科目に振り分けられる可能性があるのでしょうか?

その1つが「諸会費」です。交際費に比べて、名称だけを聞くと前者が適当なように感じますが、両者には違いがあります。

「諸会費」は所属している団体へ支払う会員料などを指します。会員料として集められたお金を資金に、団体自体の運営やセミナー開催日、印刷物配布などの費用が賄われます。

しかし通常の会費ではなく、業務に関するもの、つまり対価を求める目的で支払う会費となると「交際費」の可能性が高くなるのです。

会費と一言にいっても、その支払い目的が何であるかということで勘定科目は変わってくるという事を覚えておいてください。そして考え方のポイントは「対価性の有無」です。

個人事業主は交流会に参加したら、「交際費」で経費計上してもいいの?

交流会参加費の経費計上の分かれ目

続いては、交流会の参加費を経費として計上をすることができる2つの分かれ目についてご紹介します。個人事業主が持っているお得な特例についてもご説明していきます。

会社規模による違い

まず1つ目は、会社規模による違いです。

交流会の参加費を、経費として計上することが出来るのは、中小企業やベンチャー企業が中心です。中小企業やベンチャー企業といっても規模があいまいなので、もう少し限定してご紹介しましょう。資本金もしくは出資金の額が1億円以下であることです。

この資本金や出資金の額だけで行くと、大抵の個人事業主はボーダーラインをクリアしている方がほとんどでしょう。

ちなみに大企業においても、法改正により飲食に要した費用であることを条件に、50%を経費とできるようになっています。

支払い会費額による違い

2つ目は交流会で支払った会費の額で判断する方法です。

以前は、経費とするための金額の規制が厳しかったのですが、日本経済の景気回復の助長となればという意味合いで徐々に緩くなっています。

平成25年4月に、年間800万円以下であれば交際費を経費とすることができるという大幅な改正がありました。無条件であるということも大きなメリットでしょう。

また、1年後の平成26年にも改正が行われました。その内容は選択制となっています。

1.年間800万円を超える金額については経費とできない
2.飲食費用の内、50%は経費計上、それ以外は経費とできない

つまり、ご自身でどちらが得になるのかを試算した上で、選択することが出来るようになったのです。

個人事業主は上限額無し?

個人事業主はというと、会社規模にしても支払った金額にしてもクリアしている方がほとんどです。

さらに、個人事業主には法人と異なるお得な特例も存在します。それが、交際費を経費計上する上限額が定められていないという点です。そのため、交際費として支出した額は満額経費として処理することが可能なのです。

ただし注意しておきたいのは、なんでもかんでも交際費にしてはいけないという点です。前述したとおり、個人事業を行うにあたって事業に直接関係のある支出のみに限られますので覚えておいてください。ご家族などのための支出は当然ながら、経費とすることはできません。

個人事業主は交流会に参加したら、「交際費」で経費計上してもいいの?

交流会参加費の経費計上の注意点

個人事業主の場合は、交流会参加費は条件から外れなければ経費として計上できるという事が分かったところで、今度はその際の注意点についてご紹介します。

領収書がない場合はどうする?

交流会の参加費を支払った際に、領収書をもらえないこともゼロではありません。交際費にかかわらず、領収書が出ない支出と言うのも決して少なくはありません。

そのため、領収書がないこと=経費にできないとはなりません。もし領収書がもらえない、もらいそびれたという事態がおきてもご安心ください。

この場合は、支払証明書を自身で作成しましょう。文房具店などで帳簿などと同じく購入もできますが、所定の事項が記載されていれば問題ないので、独自の作成でも全く問題ありません。日時、支払相手先、支払い目的を明記すれば経費として計上が可能です。

交流会参加費は課税?

続いて、交流会への参加費は課税扱いになるのかという点についてご紹介していきましょう。基本的には、課税仕入れという考え方となり所得税の対象となります。

これは、交流会に参加した費用が事業に直結したものである場合、対価性が認められるためです。

交際費等の損金不算入額とは?

最後に知っておきたいのが、「交際費等の損金不算入制度」という言葉です。この制度は平成28年3月末までの制度とされていましたが、2年延長され平成30年3月末までとなっています。

それは交流会に参加した際の支払額を交際費として処理した場合に、経費として組み込めない部分への取扱いについてです。一人当たり5000円以下であれば、経費として計上できますが、そこを超える部分に関しては経費計上できなくなります

その場合、参入できない額を交際費等の損金不算入額と表現するのです。前述の金額による違いのところでも詳しくお伝えしておりますが、よりお得な方法を選択するには、きっちりした帳簿付けが必要です。ご自身でつけるのが面倒な方は会計ソフトなどを利用すると便利です。

各種の交流会に参加した際の費用の経費処理についてお届けしてきました。難しいと感じがちな交際費ですが、このようにまとめると割とシンプルなものです。また個人事業主にはお得な特例もありますので是非覚えておきましょう。