経費にすることがポイント!開業時に迷いがちな役員報酬の決め方

開業時、代表取締役、取締役などに支払う役員報酬はどの程度支払うものなのか、またどういう基準で決定すべきなのか悩むものです。

また税金との絡みや法律規制など、開業時に知っておきたい役員報酬の決め方についてご紹介します。

役員報酬を決める2つの考えとは?

当然のことながら、役員報酬をなんとなく決定する方はいらっしゃらないのですが、基本的な考えを知らない方が多いのも現実です。これを知っているか否かで、経営自体にも影響してくるため、非常に重要なことなのです。

では役員報酬を決定するうえで知っておきたい2つの考え方についてご紹介していきましょう。

1.見込み利益を試算する方法

まず1つ目は、会社の利益がどのようになっていくのかという利益計画を作成し、最終的に残った利益額までを役員報酬として取り決める方法です。

この利益計画を立てる際には、自身の役員報酬を省いた利益を算出する必要があります。また、大事なことは、曖昧な利益計画ではなく、根拠に基づいた金額の算出を行うことです。売上額、経費などを詳細にはじき出し、利益計画を立てていくのです。

ここで計画をしっかりと立てておらず、試算していた利益が残らなかった場合、手にすることが出来る役員報酬が減るだけにとどまりません。支給されなかった額に関しても所得税はかかってくるため、不利となることを知っておきましょう。

2.希望目標額から考える方法

2つ目の考え方は、まずいくら役員報酬が欲しいかという最終地点からスタートします。見込み利益から算出する場合、自分が希望する額以下になることも当然起こります。それを避け、自分の役員報酬を最低○円はもらいたいという想いがある方にお勧めの方法です。

スタートは見込み利益の場合と逆ですが、考え方は大きくは変わりません。既定の役員報酬を得るためには、売り上げがいくら足りない、もしくは経費をどう抑えるかということを考えていくのです。

一見自分本位の考えのようにも感じがちですが、会社の業績を伸ばしていくためには、売上を上げることと出ていくお金を減らすことが欠かせません。そこで、目標を掲げた上で、そこに向かって取り組むという方法は経営において重要なポイントでもあります。

経費にすることがポイント!開業時に迷いがちな役員報酬の決め方

役員報酬を経費にする3つの方法

役員報酬は事前に届け出を行っていないと、経費にすることが出来ません。そのことから、役員報酬は前述のように前もって算出した上で届出を行い、経費処理をする必要があるのです。

それを踏まえた上で、経費内で処理する為の役員報酬の支給方法を3つご紹介します。

1. 定期同額給与にて支給

1つ目は「定期同額給与」で支給する方法です。言葉の通り、毎月同じ額を同時期に給与として支払う場合を指します。

ちなみに「定期同額給与」という言葉にある定期というのは、1ヶ月以内であれば設定は自由です。そして定期がスタートするのは、会社の決算が終了した後、3カ月以内ですので覚えておいてください。

この支給方法だと法人税がかからないので、節税に繋げることが出来ます。また前もって届け出が不要なのも利用しやすいと言えるでしょう。

2. 事前確定届出給与制度を利用

2つ目は「事前確定届出給与」として支給する方法です。この方法は事前に管轄の事務所に届出を出す必要があります。

提出すべき書類は「事前確定届出給与に関する届出書」と呼ばれるものであり、提出期限も定められているので注意が必要です。まず提出期限は、以下のいずれか早い方の日となります。

1.株主総会などによる決議を行った日から4ヶ月以内
2.事業年度もしくは会計期間の開始から4ヶ月以内

もし新しく会社を設立した場合は、設立をした日から2ヶ月以内に税務署に提出してください。そして事前に届出を行った内容通りに、支給日に届出した額を支払うことが原則です。

3. 利益連動給与を採用

3つ目は「利益連動給与」として支給する方法です。同族会社を除く法人が取り入れる方法で、利益の指標を基準として業務執行役員に対して支払う給料のことを指します。

利益の指標というと分かりづらいですが、これは有価証券報告書にて記されているものを指します。それ以外は認められていません。

また同族会社というのは、会社の株主で構成されており、例えば社長が株主、奥様と社長が株主といった具合に、要はトップの考えですべてが動くような会社となります。多くの中小企業は経営陣に血縁関係があることが多く、同族会社であることがほとんどであることから、この方法を適用するのは難しいでしょう。

経費にすることがポイント!開業時に迷いがちな役員報酬の決め方

損しない為に知っておきたい役員報酬の注意点

役員報酬の支給方法が理解できたところで、税金面などで損をしないために、是非知っておいていただきたい注意点をご紹介します。

役員報酬と法人税の関係性は大事

まず1つ目は、役員報酬と法人税の関係性です。

役員報酬と言うのは、社長に支給されるもので会社には無関係と思いがちですが、それは違います。実は役員報酬を低額にすればするほど、会社が払うべき法人税は高額になっていくのです。

これは利益として残ったお金を、会社に残し法人税を支払うのか、役員報酬として支払い、法人税を下げるのかという選択にもなります。

これは会社の経営方針や戦略によって社長自身が考える事ではありますが、次期に投資がしたいので会社にお金を残すという方法もあります。また、出来るだけ節税するために、最小限の資金のみを会社に残し、社長個人が所得税を負担する方法を選ぶという方法も選べるのです。

いずれにしても、役員報酬を設定する際に法人税の存在は無視できないのです。

役員報酬と社会保険料は比例する

2つ目の注意点は、役員報酬と社会保険料の関係についてです。役員報酬が高くなればなるほど、支払うべき社会保険料があがってきます

また社会保険料は会社と個人で折半して支払うため、社長個人のみならず会社が負担する額も増えることになります。

社会保険料を多く支払ったとしても、将来的に支給される年金額はあまり期待できないのが現実です。そういうことも考えた上で、役員報酬の算出の際にシミュレーションすることをお勧めします。

定期同額給与は期内の変更ができない

最後に知っておきたいのが、「定期同額給与」を採用した場合のデメリットです。同額と決めた額を後から減額した場合に起こりがちなケースをご紹介します。

毎月45万円を「定期同額給与」として支給していたが、経営悪化などにより、半年後に35万円に減額したとしましょう。この場合、実際に支給した額に関係なく、「定期同額給与」はその1年間は減額した35万円であると判断されます。そうなると、半年間45万円を支給したわけなので、1ヶ月10万円×6ヶ月=60万円が経費扱いでなくなります。

そういった意味から考えても、計画的な金額設定をすることが大切です。

役員報酬は安易に決めるのではなく、会社の経営計画なども考えた上で設定すべきだということをお伝えしてきました。難しく感じがちですが、普段から会計ソフトなどを利用していると、さまざまな試算も簡単にできるので便利ですよ。