取引成約に繋げるには侮れない!見積もり作成の基礎と注意点

既に取引がある得意先にしろ、新規問い合わせをいただいた顧客にしろ、見積書の提示を求められることは日々起こる業務です。

見積提出から取引成約に繋がるかどうかは、金額を含めた条件ももちろん大事ですが、見積書の書き方よっても左右されます。そこで今回は、見積書作成の基礎と後のトラブルを回避するための注意点についてご紹介します。

見積書の基本を知ろう

まずは見積書の基本として、見積書が持つ3つの役割についてご紹介します。それに加えて心構えとして起こりがちな3つのトラブルについてもご説明しますので参考にしてください。

見積書の3つの役割

では、見積書の3つの役割についてご紹介します。

1つ目は、「誤認識回避の役割」です。見積書として提示することで、価格はもとより支払い条件などの誤認識を回避することができます。特に口頭だと、認識違いや言った言わないのトラブルになりがちです。

2つ目は、「詳細な条件確認の役割」です。納期の確認からはじまり、内容の詳細について書面をもって確認をすることでより分かりやすく情報を共有できます。

3つ目は、「発注の後押しをする役割」です。この商品欲しいな、このサービス受けたいなと思っても値段や条件が分からない事には、決定できません。しかし、見積書には価格をはじめとする購入時の条件が明確に記載されていることから、これなら買おうかと動くアクションを起こしやすくさせるのです。

見積書で起こりがちな3つのトラブル

購入者と販売者を結びつける意味合いももつ見積書は非常に重要な書面ですが、なかには以下のようなトラブルに巻き込まれることもあります。よくありがちな3つのケースをご紹介します。

1つ目は契約後、支払い時に起こりがちなトラブルです。最終の請求書を提出したときに、「見積もりと内容が違うので支払えない」と言われることがあります。これは見積もりの作成者側と受取側の認識に違いがあった、もしくは追加料金などについて認識違いがあった場合などに起こりがちです。最初の見積もりに追加料金について明記することはもちろん、了承をもらって進めることが大切です。

2つ目は納期遅延によるトラブルです。見積書には納品期限を記載しますが、それを遅延したことから、最悪賠償などを求められるトラブルもあります。納期が遅延する可能性もあるということを頭に置いた上での納期設定が必要でしょう。

3つ目は、見積書の提出が遅すぎたことで、泣く泣く受注を逃したというトラブルです。これも非常によくあるケースですが、日々の業務に忙しいとつい見積もり作成を後回しにしてしまいがちです。しかし見積書を待っている相手からすると、時間が立てばたつほど購買意欲は薄れるのです。早めに作成することはもちろん、いつまでには提出しますと期限をこちらから伝えるようにしたいものです。

取引成約に繋げるには侮れない!見積もり作成の基礎と注意点

保存義務に基づく見積書に記載すべき5つのポイント

請求書などをはじめとする証憑書類は法律で7年間の保存が定められています。その証憑書類の中には見積書も含まれています。これにのっとった上で、見積書に記載すべき5つのポイントを見ていきましょう。

1.トラブル回避に日付は必須

1つ目は、見積書の発行日です。日付の記載位置は右上にするのがビジネス文書における基本です。

また見積書は一度提出したら終わりではなく、金額の見直しや条件の見直しが入ることも多々あります。どれが最新の見積書であるかが分かるようにも日付は必須なのです。

さらにほぼ同じ内容の見積書であっても、仕入れ価格高騰などによって毎回同じ金額になるとは限りません。そこで、商談をする際も、いつの時点の見積書かというのを明確にして進める必要が出てくるため、必ず記載しましょう。

2.相手先会社名と担当者名

2つ目は、見積もりを提出する相手先の会社名と担当者名です。これは左上に記載するのが基本です。これを記載し忘れることはまずありませんが、相手の会社名及び担当者名とも、漢字の間違いなどがないように、名刺を確認しながら記載してください。

株式会社、有限会社という文言を略すことは失礼なので気を付けましょう。ちなみに、会社の名前の後ろには「御中」、個人名の後ろは「様」をつけますが、併用はしません。以下の例を参考にしてください。

(例)
〇×株式会社 営業部 課長 山口様

3.見積もり作成会社名と担当者名

3つ目は、見積もりを作成するあなたの会社名と担当者名、そして連絡先です。これは見積もり作成日の下に記載してください。相手がすぐに問い合わせや連絡ができるように、以下の事項を記載してください。

・会社名
・郵便番号+住所
・電話番号+ファックス番号
・担当者名(読み間違いをしやすい場合はフリガナ)

もし会社のロゴマークなどがある場合は、会社名の所に付け加えてください。最近ではメールアドレスを記載することも増えています。

4詳細で誤解を生まない取引内容

上記3つは、どの見積書にも共通して記載する事項です。4つ目に関しては、見積もりの内容を出来る限り簡潔に、かつ誤解がないように記載することがポイントです。

・名称(例えば、商品名・型番・品番・作業内容・作業範囲など)
・摘要事項
・数量及び単位
・単価
・合計額

国税庁がホームページ上で掲示している見積もり内容における取引内容の記載は、商品名などの詳細は記入せずひっくるめた記載方法も認めるとしています。

しかし表記に関しては、お客様の会社の性格に応じた記載をすることをお勧めします。

5.消費税を含む取引金額

5つ目は、見積金額の総合計です。最終的にどれだけの費用が発生するのかという部分を見積もり依頼者は知りたいため、目立つように大きめのポイントでかつ太字などで目立たせましょう。

取引金額は、4の取引内容の表組の最後と、上部にもう1つと2か所に記載しておくと分かりやすくて親切です。また消費税の記載方法は、税込みもしくは税別のいずれでも構いませんが、税抜き価格のみの記載しかないのはNGです。この価格が税込みだと思っていたと、後からトラブルになるのは避けたいですね。

取引成約に繋げるには侮れない!見積もり作成の基礎と注意点

見積提出時の注意点

見積書が作成できたら、後は提出するだけと思いがちですが、その前に確認して欲しい注意点をご紹介します。

1.見積内容の社内決裁を忘れずに

1つ目は社内の決済です。当然のことながら、その見積額を出すにあたって同業他社の価格などを参考にしたり、利益がどのぐらいあるのかを試算はしていることでしょう。

しかし、最終的に自社の上司なりトップが了承を出すかどうかが大事なポイントです。特に金額や条件は自分だけの判断でないこともあります。全任されている場合以外は、承認を受けてから提出してください。

2.提出方法の確認と押印の種類

2つ目は、提出方法と押印についてです。提出はメールに簡単に添付して送付する場合が増えていますが、可能であれば出向いて提出できるのがベストです。

直接会って見積もりを提出することで、ダイレクトに相手の反応が分かりますし、補足や見積もり修正にもプラスとなるでしょう。そこで、見積書が完成したら、まずはお持ちしたい旨の一報を入れましょう。遠方で難しい場合や、メールもしくはファックスを希望された場合は、送付した後に電話をして反応の確認やフォローアップが必要です。

また、見積書に押印する印は、角印と呼ばれる認印(社印)と、見積もり作成者の担当員を押してください。いずれか一方のみでも構いませんが、社印だけの場合は会社名・住所などに少し被せる形で押すのが基本です。印は朱肉で押印し、メールで送る場合は押印したものをカラースキャンして送ってください。

3.見積期限と支払方法を必ず明記

3つ目は、提出する見積書の期限と支払方法です。見積書は永久に有効ではありません。極端な話、何年も前の見積書で発注されると、価格の高騰やサービスが変わっていることもあります。

そのため、基本的には1カ月程度の猶予を持った期限を設定してください。ただし、特別価格で設定しているなど、特別な事由がある場合は早めの日付で設定しても問題ありません、

また支払方法は、前受、後払い、一部前受などさまざまなケースがあります。また末締め翌末払いなどの約定も会社ごとに異なるため、きっちりと記載をしておくようにしましょう。

分かっているようでおざなりになりがちな、見積書作成の基本と注意点に注目してご説明してきました。お互い気持ちよく取引をする一歩として、基本を守った誤解を生みにくい見積もり作成に努めましょう。