実践することで確実に変わる!個人事業主ならではの2つの節税

会社員のように毎月ほぼ決まった収入を得られる状況からは一転するのが個人事業主です。会社員のようにいくら頑張っても、利益が給与にダイレクトに反映しないという理不尽なことはない反面、直面するリスクにも自身で対応する必要があります。

このような個人事業主になったあなたがまず考えるのが、いかに節税しお金を手元に残すのかということでしょう。そこで、今回は個人事業主だからこそ可能な2つの節税に焦点を当ててお話していきます。

個人事業主における節税のポイント

まず、ここでは節税の基礎的な考え方を知り、その上で負担すべき税金と節税を実現するポイントについてご紹介します。

節税の基礎的考え方

個人事業主であろうが、一家の財布を握っている主婦の方であろうが、節税にまずは何が必要かということに変わりはありません。

なんとなく節税が出来たらいいなという考えではまず実現は不可能です。その為、以下の2つの観点に着目しましょう。

1.目的はお金を残すこと
2.利益を数字で把握すること

当たり前のことに感じますが、この基礎的考えを忘れ、本末転倒に陥る方も少なくありません。

いくら節税とはいっても、税金を減らすことは最終目的ではないはずです。手元にお金を残す方法の1つとして節税を利用すべきなのです。つまり、お金が残らないのであれば、節税をしないという選択肢もありです。

次に、先月の利益、先々月の利益、その推移を把握していますか?なんとなく売上が今月は良くない気がする、仕事が少ない気がするというのでは曖昧すぎます。数字で把握することが必要です。

そのためには、会計処理を行いそれを活用することです。万が一、会計処理を始めていないという方はすぐにでもスタートしてください。ご自身でうまくできないという方のために、最近では数字を入力するだけでグラフ化してくれる会計ソフトも多くあります。

支払いが来てからあたふたするのではなく、常々利益を把握する習慣をつけましょう。実際に確定申告前に始めるよりも、今から始めることで格段に打つ手も増えるのです。

個人事業主が負担する税金と節税ポイント

節税を1つの手段として取り入れるのであれば、負担すべき税金を知っておく必要がありますので、以下にご紹介します。

・所得税
・個人住民税
・個人事業税
・消費税
・印紙税

これらの中で、最も重要な物は「所得税」に他なりません。所得税はというと、確定申告をした後に支払う所得に対してかかる税金です。

ただし所得税をかからないようにするからといって、収入を減らす訳ではもちろんありません。所得税は、収入-経費によってはじき出された金額が課税対象となります。そこで、経費を見直すのです。これが1つ目です。

2つ目は、確定申告を青色申告で行うことです。面倒くさいと感じがちですが、これによって65万円という大幅な節税が可能です。

まずは経費と青色申告という2つのキーワードを覚えておいてください。

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個人事業主の節税は所得税が大事

節税の基礎的な知識とポイントが頭に入ったところで、今度は具体的に青色申告について詳しく見ていきましょう。

迷わず青色申告を選ぶこと

はっきりと言い切れることは「白色申告」にメリットはゼロに近いということです。

青色申告は帳簿への記帳が面倒だというイメージが先行しがちですが、現在では白色申告であっても記帳義務があります。つまり面倒だという観点から敬遠していた青色申告と白色申告が帳簿をつけるという意味合いで同等になっているのです。

しかも青色申告には白色申告にはないメリットが多く存在します。

65万円の控除を受けられるため、節税効果大
・奥さんなど家族に給与を支払い経費として計上可能
・売掛金が回収できないケースに備えて引当金を経費計上可能
赤字の繰り越しが可能
30万円未満の備品購入は一括で経費計上可能

このメリットは白色申告をしている方が享受できないものばかりです。

青色申告をするには届け出が必須

では白色申告から青色申告に切り替えるにはどのような手続きが必要なのでしょうか。これは確定申告を行う所轄の税務署に届出書を提出するだけです。

ただし届出書の提出には3月15日という期限があります。つまり、平成29年3月15日までに届け出を行うと、平成29年分から青色申告が可能となるのです。3月15日以降に届出を行った場合は、翌年度からの適用となります。

この期限には例外があります。開業を行った年に限り、開業から2ヶ月以内に届出書を提出すれば、開業年度分から青色申告が可能です。

では、税務署に提出する4種類の届出書を以下にご紹介します。

・青色申告承認申請書
・給与支払事務所等の開設届出書
・青色事業専従者給与に関する届出書
・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

フォーマットは国税庁のホームページからダウンロードできます。また書類提出は直接、税務署に出向いても構いませんし、郵送しても構いません。万が一不備があった時のことを考えると、出向いくことをお勧めします。

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青色申告の具体的なメリット

手続き方法が分かったところで、青色申告を行うにあたって得られる具体的なメリットを詳しく確認してきましょう。

1. 65万円の控除

この控除を受ける為の条件は、青色申告で確定申告をすることと、会計ソフトを利用して経理を行うことの2つです。具体的には、複式簿記での記帳を行い、かつ確定申告時に貸借対照表と損益計算書の2つの提出が必要です。

もし複式簿記による記帳は行わずに、青色申告にするだけで10万円の控除が受けられます。

2.家族への給与支払いが可能

他の仕事をしていない、15才以上の親族にいわゆる専従者給与を支払うことができます。金額は従業員を雇った場合に支払うのと同等の額にする必要があります。これにより家庭の所得を分散することになり節税に繋がります。

3. 貸倒引当金を経費計上

売掛金で取引を行う場合、回収不可能になった時のために貸倒引当金を設定します。青色申告者であれば、売掛金の5.5%を経費にすることができます。

4.赤字の繰越

白色申告は赤字の繰越ができません。しかし、青色申告の場合3年間赤字を繰り越すことが出来ます。そのため、昨年50万円赤字だった場合、今年の黒字が100万になれば昨年の50万の赤字が繰り越されます。つまり50万円の黒字分の所得税のみを支払えばいいのです。

5.30万円までの備品を一括経費計上

白色申告の場合、備品は10万円未満でないと経費として計上できず、それを超えると固定資産として計上する必要があります。

一方の青色申告者は、この額が3倍の30万円まで可能です。

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個人事業主の節税は細やかな経費の計上が必須

青色申告に切り替えて所得税を節税することに加えて忘れはいけないのが、細やかな経費の計上です。

個人事業主になると、事業としてのお金と日常生活に関連するお金の境が不明確になります。そのため、明らかに事業の経費であると言えない場合は、ポケットマネーから出してしまう事も多いものです。

しかし洗い出して見ると、意外に経費にできるものを自分の懐から出しているケースが増えています。

節税に経費計上が重要な理由

経費をいかに細やかに計上するかが何故節税につながるのかというと、所得税の仕組みを思い出せば一目瞭然です。

所得税がかかるいわゆる課税対象額は以下の式で求められます。

課税対象額=収入-必要経費-各種所得控除

つまり収入から差し引かれる経費が、いかに多いかで所得税が課せられる額が安くできるかどうかが変わります。ただし、経費を増やすとはいえ経費を敢えて作り出す必要はありません。現在支払っている支払額のうち、経費にできるものはないのかを精査することが大切なのです。

例えば、ご自宅の家賃であっても、個人事業で使用しているのであればその一部を経費にすることは十分可能です。家賃に伴う光熱費やインターネット使用量なども同様です。また車をプライベートと仕事と併用している場合も、ガソリン代、保険料など車にかかる費用を一部経費負担にできるのです。

ポイントは、事業として使用している部分がないのかというところになりますので覚えておいてください。

必要経費とは?

では、収入から差し引かれる必要経費とは具体的にどのようなものがあるのかをご紹介しましょう。

1.事務所経費(家賃、通信費、光熱費、火災保険料、住宅ローンの利息など)

生活における住居と事務所の面積比で計算しますので、可能であれば仕事部屋を作ることをお勧めします。そうでない場合は、衝立などで明確に区分けを行ってください。

光熱費などは、自らが家庭と事業の割合を妥当な数字で決めてください。自家用車も同様です。週や付きで使用日数を算出して計算するといいでしょう。

2.什器備品(パソコン、ソフト料金、プリンター、プロジェクターなど周辺機器、自動車など)
3.消耗品費(印刷用紙、インク、文房具、パソコン用品など)
4.旅費交通費(宿泊費、交通費、高速代など)
5.交際費(接待費など)

これら意外にも、事業に必要な専門誌やセミナーなどの参加費用、資料代、通信教育費なども必要経費とすることができます。

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目的次第で経費にできるものとは?

支払った費用によっては、果たして経費にしていいのかどうか悩むものもあります。これに対しては、法律できっちりとは定められていない為、ご自身で事業の目的に合致していると判断できるものであれば、経費にして差し支えありません。

例えば、ライターやカメラマンなどといった特殊な職業の場合はさらに経費の幅が広がるでしょう。食事をしながら取材をした場合の、飲食代や取材に行くにあたってかかった交通費なども経費に含まれます。

ご自身の事業目的を今一度振り返り、経費に含められるものはないのかを再度確認することをお勧めします。

経費にできないものとは?

節税のために、何でも経費にすればいいのかというとそうでないもののあります。これは経費として計上することは出来ないものを下記にご紹介しますので知っておいてください。

・所得税及び住民税
・健康保険料、国民年金
・借入金の返済にあてた費用
※利子は経費計上可(借入金が同居および一生計の親族からの場合を除く)
・交通違反による罰金など
・福利厚生目的の支出(個人事業主自身の福利厚生は不可)

いかがでしたでしょうか?節税を行っていくために、すぐに始められる2点に焦点を絞ってご紹介してきました。特に節税における経費計上は、貯金と同じく積み重ねです。こまめに計上し、節税に勤めましょう。