いまさら聞けない?領収書に貼るべき収入印紙の金額と判断方法

事業をしていると領収書を発行する場面にも遭遇するものです。最近では振込でお金のやり取りをすることがほとんどですが、そういった場合でも、お金を支払った方が領収書の発行を請求してきた場合は作成する義務があります。

今回は恥ずかしい思いをしないためにも、領収書に貼る収入印紙の基礎知識についてお伝えいたします。

領収書に貼る収入印紙の基礎知識

領収書に貼る収入印紙の基礎知識を踏まえた上で、収入印紙を貼るべきケースと貼らなくていいケースをご紹介します。

収入印紙の基礎

何気なく貼っているかもしれませんが、収入印紙を貼るという行為は納税をする事なのです。ただし収入印紙を領収書などに貼るだけでは納税とはなりません。領収書と収入印紙にまたがるように割印(消印)をしてはじめて納税完了となり有効性を持ちます。つまり割印を押し忘れると、税務調査で指摘され、再度税金を徴収されるケースもあるので注意が必要です。

また収入印紙を貼り付けていないと、本来の収入印紙額面の3倍にあたる金額の支払い義務が過怠税として課せられるケースもあります。

収入印紙を貼るべき書類を「課税文書」、つまり収入印紙税が課せられる文書と呼びます。「課税文書」にはどんなものがあるのかをご紹介します。

・1号文書(例:不動産売買の契約書など)
・3号文書(例:10万円以上の金額が記載された支払手形)
・6号文書(例:会社設立時の定款)
・7号文書(例:業務委託契約書)
・17号文書(例:領収書)

領収書以外にも収入印紙を貼る課税文書がありますので知っておいてください。

収入印紙を貼るべきケース

次に領収書に収入印紙を貼るべきケースについて知っておきましょう。

受領した金額が、5万円以上の場合です。3万円以上という記憶がある方もおられるかと思いますが、平成26年4月1日の印紙税法および租税特別措置法の一部の改正に伴い、5万円以上と変更されました。また5万円以上というのは売上代金として金銭を授受した場合に限られます。

つまり領収書に収入印紙を貼るべきケースのポイントをまとめると以下となります。

「売上代金として」、「50,000円を超える金銭」を授与した受け取った場合

収入印紙を貼らなくていいケース

続いて収入印紙を貼らなくていいケースについてご紹介します。

上記の領収書に収入印紙を貼るべきケースと観点は同じで「金額」と「売上代金かどうか」になります。

金額は5万円未満であれば非課税とされ、領収書の貼り付けは不要です。そして授受した金銭が売上代金以外のものだと領収書への収入印紙の貼り付け義務がなくなります。

売上金額以外とは、自身の営業には関係しているが売上として計上しないものを指します。具体的には以下のようなものがあげられます。

保険金・損害賠償金・借入金・返還金・補償金などの受取書

これらに加えて「営業に関しない領収書」は、金額にかかわらず非課税文書となり収入印紙の貼り付けは必要ありません。例えば、実店舗を持たない農業、漁業従事者が生産物を販売する場合などがあげられます。

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領収書に貼るべき収入印紙の額

5万円未満の領収書には収入印紙が不要とされていますが、その判定方法についてもう少し詳しく見ていきましょう。そして領収書に貼るべき収入印紙の額もご紹介します。

収入印紙を貼らなくて良い金額と判定方法

5万円という金額ですが、この金額は税抜きの金額です。つまり消費税込みで50,000円以上の場合は不要です。

(例)
1.消費税8%で、受取金額¥50,760(税抜き ¥47,000)の場合→収入印紙不要
2.消費税8%で、受取金額¥54,000(税抜き ¥50,000)の場合→収入印紙必要.

次に売上代金として授受した金額と、それ以外の金額を同時に受け取った場合の判定方法をご紹介します。

(例)
1.「売上代金+売上以外の受取金額=5万円以上→収入印紙が必要
2.「売上代金+売上以外の受取金額=5万円未満→収入印紙が不要

つまり売上代金と売上以外の受取金額が混在している場合は、合計額で判断します。

受取額と収入印紙の額の一覧

では実際に受け取った額と、領収書に貼るべき収入印紙の額を一覧でご紹介します。

・5万円未満→不要
・5万円以上〜100万円以下→200円
・100万円を超える額〜200万円以下→400円
・200万円を超える額〜300万円以下→600円
・300万円を超える額〜500万円以下→1,000円
・500万円を超える額〜1,000万円以下→2,000円
・1,000万円を超える額〜2,000万円以下→4,000円
・2,000万円を超える額〜3,000万円以下→6,000円
・3,000万円を超える額〜5,000万円以下→10,000円
・5,000万円を超える額〜1億円以下→20,000円
・1億円を超える額〜2億円以下→40,000円
・2億円を超える額〜3億円以下→60,000円
・3億円を超える額〜5億円以下→100,000円
・5億円を超える額〜10億円以下→150,000円
・10億円を超える額→200,000円

ちなみに、受取金額の記載がない領収書には200円の収入印紙を貼るようになっています。

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収入印紙税から考える正しい金額の記載方法

収入印紙税というのは印紙税法に定められている税金です。そのため、ただ収入印紙を貼ればいいのではなく、法律に乗っ取った領収書の記載を行う必要があります。

消費税額を明確に記載

正しい金額の収入印紙を貼る為にも、領収書に消費税額を明確に記載することが必要です。特定の期間の売上が1,000万円を超える課税事業者となると記載が義務となります。そこで、今のうちから明確に記載する習慣をつけておきましょう。

具体的にどのような記載方法をすればいいのかを以下にご紹介します。

(例)消費税8%で、受取金額¥54,000(税抜き ¥50,000)の場合

「領収金額54,000円、うち消費税額4,000円」
「領収金額54,000円、税抜き価格50,000円」
「本体価格54,000円、消費税額4,000円」

このように記載することで、税抜き金額のみが収入印紙税の対象となるのが明確です。

消費税が分かりにくいことのペナルティ

消費税がいくらかかっているのかが分かりにくい領収書や、税区分の区分けが記載されていない領収書を発行するとペナルティ対象となります。

税務調査などの際に、指摘を受け領収金額全部が印紙税に対象となることもあります。また、同じ金額を受領したにもかかわらず、支払う印紙税が変わるケースもあります。

(例)
1.「領収金額1,078,920円、うち消費税額79,920円」→100万円以下なので印紙税は200円
2.「領収金額1,078,920円」→100万円超200万円以下となり印紙税は400円

収入印紙が貼られていない領収書は無効か

最後に、収入印紙が貼られていない領収書の有効性について見ていきましょう。

答えから申し上げますと「有効」です。お金を払ったという証明にはなります。しかし、お金を受け取った人が納税義務を怠っている状態です。

つまり収入印紙を貼り忘れて領収書を発行してしまうと常識がないと判断されても仕方ありませんのでお気を付けください。

ご紹介してきた通り、収入印紙の貼り付けが必要なケースは、受取金額が税抜き5万円以上の売上金額についてです。また納税義務を果たすためにも、お客様の信頼を崩さないためにも、領収書は消費税額を明確に記載し、正しい金額の収入印紙の貼り付けを行いましょう。

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