電気屋、車屋など、様々なところに様々な物を修理に出す機会があるかと思います。しかし、認識が修理だとしても、税法上は修理だと見なされず修繕費とならない場合もあるのです。非常に間違いやすい修繕費について基礎から学んで行きましょう。
修繕費の概要
まずは修繕費の定義、そして修繕費として認められる範囲について具体例をあげてご説明します。
修繕費とは?
修繕費に含まれる費用ということで、所得税の基本通達に記載されている内容をかいつまんでご紹介すると以下の内容となります。
・業務用の固定資産の修理、維持のために支出した費用であること
・その支出が、固定資産において通常の維持管理だと認められるものであること
もしくは
・天災などによりき損した固定資産を現象回復するのに要した費用であること
修繕費の範囲
修繕費の定義が分かったところで、修繕費の範囲について具体的にご紹介します。
・建築設備などにかかる修理および保守
・建物の改修及びリフォーム工事
・OA機器などの修理及び保守
・事務機器、AV機器の修理
・車両修理及び保守
・机、椅子など備品の修理
・清掃費用
前述したとおり、あくまでも固定資産の修理、定期的な点検、保守点検、清掃などに当たる費用に限ります。
修繕費の具体例
さらに掘り下げて修繕費の具体例を見ていきましょう。
・建築設備などにかかる修理および保守
→火災報知器、エレベーター、給排水設備の修理および保守など
・建物の改修及びリフォーム工事
→屋根修理、外壁の塗装やりかえ、ガラス及び畳の張替えなど
・OA機器などの修理及び保守
→パソコン保守、OA機器の修理・保守
・事務機器、AV機器の修理
・車両修理及び保守
→定期点検、車検、オイル交換、タイヤのパンク交換、部品の交換、洗車など
・机、椅子など備品の修理
・清掃費用
→害虫駆除、清掃会社の外注費
このようにしてみると、修繕費して計上できる範囲は割と幅が広いことが分かります。
注意したい修繕費の考え方
しかし修繕費の考え方には、2つの方法があります。その2つの支出について正しく理解していきましょう。
修繕費における2つの支出
冒頭で修理に出したからといってすべてが修繕費として計上できる訳ではないことをお伝えしました。
それは、税務会計上では修繕費にまつわる2つの支出の考え方が存在するためです。1つ目は、資本的支出という考え方です。もう1つは収益的支出です。
いずれに当てはまるかで、会計処理が変わってきますので注意が必要です。
資本的支出とは?
まずは資本的支出から見ていきましょう。
資本的支出は、言葉の通り資産となる支出です。そのため、税務上、この支出を修繕費として費用計上することはできません。
例え、修理だという名目での出費であったとしても、その修理によって性能が向上したり、耐用年数が伸びると資産価値が増加したと判断されます。そこで、資産計上として固定資産の取得価格に加える必要があります。
加えられた価格も資産であるため、減価償却の対象となります。
収益的支出とは?
一方の収益的支出は、修繕費として支払いを行い、修繕費として経費計上される支出のことです。上記の資本的支出の条件に該当しないものであれば、基本的に収益的支出として修繕費処理をしてください。
修繕費として認められるポイント
次に修繕費と認められるためのポイントにはどのようなものがあるのか、以下にご紹介します。
・修理によって耐用年数が伸びないこと
・資産の価値が修理によって増加しないこと
・資産の現在の状態に新たな付加価値を付与していないこと
・修繕によって用途が変更されないこと
判定が難しい場合
修繕費として扱っていいのか、資産として計上しないといけないものなのかに悩むことがあるでしょう。そんな時に、是非知っておきたいポイントをご紹介します。
まず1つ目は、修繕のためにかかった費用の額です。60万円未満であれば、修繕費として計上しても良いとされています。
もう1つの考え方は、修理する資産の前期末取得価格を基準として10%未満であれば、修繕費と出来るというものです。修理する資産の前期末の取得価格というのは、以下の式で求めることが出来ます。
前期末での取得価格+取得後の資産的支出の合計
また、資産も年々劣化していくため、修繕の頻度が上がってくることもあるでしょう。目安として3年以内周期の修繕であれば、修繕費としても差し支えありません。
さらにすべてを修繕費か固定資産というどちらか一方にするのではなく、双方を組み合わせた処理をすることも可能です。
その場合、「修繕のための支出額の30%」と「理する資産の前期末の取得価格の10%」を比べてください。いずれか小さい額を修繕費とし、残りを固定資産として加算するという方法も取ることができますので覚えておいてください。
修繕費の経理処理
では最後に修繕費の経理処理について簡単にご説明します。
修繕費の決算での位置づけ
財務諸表において修繕費はどの区分にあたるのかというところから見ていきましょう。まず修繕費は、費用であるため「損益計算書」の中に組み込まれます。
さらに「損益計算書」の中の、経常損益の部→営業損益の部→販売費および一般管理費に表示される科目です。勘定科目は、修繕費です。
修繕引当金の設定がある場合
修繕費として計上する場合に、前もって修理に備えて引当金を設定していることもあるでしょう。それが「修繕引当金」勘定と呼ばれるものです。
「修繕引当金」は修理のために設定されているお金ですので、修繕費が発生した際にはいきなり修繕費として計上はしません。「修繕引当金」を取り崩したのち、残額を修繕費として計上するのです。
迷いがちな修理にかかった費用の処理方法と考え方についてご紹介しました。是非参考にしてください。